NEC(日本電気株式会社)が8月20日、公式リリースを発表した。現在、NECはジャパンラグビー リーグワンディビジョン2(D2)に所属する「NECグリーンロケッツ東葛(GR東葛)」を運営しているが、2025-2026シーズン終了後のリーグワン退会を前提に、チームの譲渡に向けた検討を開始したという。
GR東葛は、現在はD2所属だが、1985年の創部以来、日本選手権優勝3回、マイクロソフトカップ優勝1回の実績を持ち、多くの日本代表選手を輩出してきた名門チームの一つだ。
NECは退会を前提に「これを受け、これまで培ってきたチームの資産を承継すべく、チームの譲渡に向けた検討を開始する」という。
その理由といてNECは「従業員の一体感醸成や士気高揚を目的に、文化体育活動の一環としてGR東葛を運営してきましたが、近年ラグビーを取り巻く環境が大きく変化する中、NECにおけるチームの位置づけを慎重かつ多面的に検討した結果、NECが中長期にわたり持続可能な形でチームをさらに発展させていくことは困難」と説明した。
なおGR東葛は、2025-2026シーズンはD2に参戦することが決まっており、太田治GMは「2025ー26シーズン終了後のクラブ譲渡にチャレンジすることになりました。クラブとしても関係者と連携して譲渡に向け全力でチャレンジして参ります。2025ー26シーズンは目標である、D2優勝、D1昇格に向けてチーム一丸で戦って参ります」と話した。
同日、NECのリリースを受けてジャパンラグビーリーグワンを運営するJRLOの東海林一専務理事がオンライン会見を実施した。

東海林一専務理事
冒頭、東海林専務理事は「GR東葛を運営するNECから、2025-26シーズンのシーズン終了後、(リーグからの)退会を前提に譲渡することを決めて、8月20日から譲渡先を探すという発表がありました。リーグとしては大変残念だが、譲渡に関してリーグとしてはNECと連携して最大の努力をしてまいりたい」と挨拶した。
また補足として以下の話も加えた。「1点目は、今回の発表は退会を前提に譲渡先を探すということで、譲渡が成立しない場合は退会すると理解している。譲渡とは、リーグとしては、チームの現状を維持しつつ保有者が変わることが譲渡としている。(リーグの規約の)第14条にあるように、譲渡については、理事会の承認が成立要件にしていますが、その際のポイントとしては7~8割の既存戦力を維持、継承が目処と考えています。現状を維持するためには、いくつか成立要点があると考えていますが、そこに関しては、今後、理事会で議論していく。

2つ目は譲渡をいつまでに、ということですが、2025-26シーズン後に退会する際には、1年前の2025年12月までには退会の申請をしてもらう必要があります。そこを鑑みれば、譲渡も同じタイミングが成立のタイミングとなります。リーグとしてはチームと協力して譲渡の成立をめざしていきたいと思います」
その後、質疑応答が行われた。
質疑応答
――東海林さんのこの話が来た経緯は?
約1年前に、今回のような譲渡という形ではなく、さまざまなチームのあり方についての相談ということで、NEC本社の方からお話をいただきました。その後、本社サイドとチームのあり方を議論し、その結果を踏まえて、今回、本社側で譲渡、それが成立しなかった場合は退会になると発表された。

――NEC側の発表で、退会理由に「近年のラグビーを取り巻く環境が変化し、持続可能な形でチームをさらに発展させていくことは困難」とありましたが……。
NEC側からの説明で、今回の退会の理由は NECで、事業ポートフォリオの見直しをするなか、(GR東葛を)継続する意味合いを十分に見いだせなかったとうかがっています。それが譲渡を検討する理由と認識しています。
――リーグとしての受け止めは?
リーグワンはさまざまな進化を遂げてやってきているが、その中で、チームを取り巻く環境も変化している。その点をご考慮した上での先ほどの事業ポートフォリオとして、チームを持つ意味が変わったと認識しています。
――リーグワンがスタートしてから2チーム目の譲渡もしくは退会。近年、新リーグが5つスタートしているのは、退会しているのはリーグワンのみ。原因、改善策は?
2チームが退団しているのは、残念だし重く受け止めている。その中で、改善策は、退会している、していないに関わらず、ラグビーの価値を高めていく、収益性を高めていく2つが重要なポイントだと思っております。そこの活動を継続していく

――収益性を高めるというところで、法人化していないNECがこういう結果となった。法人化しているバスケットボールのBリーグ、ハンドボール、バレーボールは退会が出ていないが……
現在のリーグワンでは、法人化のところは必要なチームが法人化していく、そうでないチームは企業の中でやっていく。それを(各)チームとして判断している。今回のケースが保有形式と直接的にむすびついているとは考えておりません。しかしながら、どういう形がチームの形がいいか考える必要がある。引き続き今の方針でいいか検討をしてまいりたい。
――なぜリーグワンが発足してから2チームが退会したのか、その原因は?
ラグビーは非常にチーム運営に大きなコストがかかる。これは他スポーツと比べて、相対的にかかるという一般的な傾向はあろうかと思います。そうした点で、今回のケースの理由は必ずしも収益面の話だけではないが、コストの負担の大きさが特にラグビーでは大きいという事実が背景にあると考えています。
――NEC側は福利厚生、社員の意識向上でチームを保有していた。一方で、リーグは収益性の向上、世界を目指している。またトップチームは収益性と世界のトップを目指しているが、福利厚生としてやっているチームもあり意見が分かれている。今後、それを分けようと検討することはあるのか?
ご指摘の通り、収益を目指す、母体企業の価値を向上させるという点は、リーグ全体として共通であるが、チームによって、どこに重きを置くかについて、状況に差異が生じていることはあろうと思います。それに対しての対応は必要だと考えています。ルールによる対応、議論の仕方による対応、組織面での対応など具体的な対応はこれからつめていかないといけないが、一定の対応は必要だと認識しております。
――サニックスと違い、NECは業績好調の中で退会となりそうですが、どう受け止めている?
ご指摘のとおり、リーグの理解としまして、会社の業績と今回の判断は、結びついていないと認識しています。事業ポートフォリオを見たときに、GR東葛を維持、発展させていくものではないと会社側で判断があったと理解しております。
――GR東葛は12月までに譲渡先が見つからない場合は理事会の承認を経て退会となるが、チームの昇降格への影響は?
チームの降昇格に関しては、その時に決めます。特殊の要因になったら、その時に降昇格のルールを検討しているので、それに習ってやる方針です。
――現在、リーグワンに参入しようとしている2チームが譲渡先になる可能性はあるのか?
現時点ではないと認識しています。今後の話は否定できないが、2チームが独立した話で申請していると認識しています。
――譲渡先は国内だけじゃなく、海外の可能性はあるのか?
あります。具体的に言えば日本で法人格が持っている先、というのが譲渡先となります。他の地域であっても、リーグ参入のところの条件であるホストスタジアムは満たしていただく必要があります。
――譲渡先を探していく上で、リーグとしてのスタンスは? 調整などはしていくのか?
リーグとして全力を尽くします。当事者はNECでいらっしゃいますので、これまで間接的にサポートさせていただいていますが、今後に関しても最大限にサポートしていきます。
退会、譲渡は理事会での承認事項になりますが、さまざまな可能性が追求できるように、NEC、GR東葛をサポートしていきます。
――GR東葛が退会すると、NECのラグビー部は廃部となるのか?
NEC側の話となるが、リーグワンは退会するが、クラブチームとして存続するというオプションは理論的に存在すると思います。
![]() スポーツライター。1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。印刷会社の営業を経て独立。サッカーやラグビー等フットボールを中心に執筆する。現在はタグラグビーを少しプレー。過去にトップリーグ2チームのWEBサイトの執筆を担当する。リーグワン、日本代表を中心に取材。 プロフィールページへ |