ロンドンパラリンピックで初の準決勝進出、メダルをかけたアメリカ代表との試合でも最後まで粘り強い戦いを見せてくれたウィルチェアーラグビー日本代表の「パラリンピック報告イベント」が15日、秩父宮ラグビー場で開催された。イベントを前に行われた記者会見には、岩渕典仁監督、三坂洋行、荻野晃一両バイスキャプテンら選手5名とトレーナーの2人がロンドンでの戦いを報告した。
「開催国相手の試合で世界に日本の強さをみせることができた」ー岩渕監督

まずは、前回北京五輪では7位だったチームを今回4位に押し上げる事ができた要因について岩渕監督が質問にこたえた。
ー技術面について
今回出場した選手の中に、アテネ、北京五輪を経験した選手が6名いました。その選手たちが国際経験も豊かですし、技術面、海外でのプレー経験があり、チームづくりの中心となってくれました。
ーチーム作りについて
選手だけではなく、スタッフの方も勉強してトレーナーが栄養面、ケアの面、トレーニング方法など、コミュニケーションしながらすすめて行えたことがよかったと思います。
ー環境面について
国からの経済的な支援が増えたことと、練習場所も宿泊場所の提供も、前回の北京にくらべるとよかったように思いますが、まだまだすべてが整っているわけではなく、選手一人一人が、経済的な負担をしたり、仕事をしながらゲームを続けるという状況は残っています。
ー4位という結果について
ロンドンは、メダル獲得というのを目標にしていたので、正直、3位決定戦のところで敗れた時にはやはり悔しい思いは選手もスタッフもありました。ただ、そこにいく過程においては準決勝で今回優勝をしたオーストラリア、そして3位決定戦では前回の覇者であるアメリカに対して、第1、第2ピリオドではとても接って戦うことができましたし、今出せる日本の力をみせることができたと思います。
ー大会全体をふりかえって
準決勝オーストラリアと対戦しましたが、もう一つのブロックではアメリカがカナダと対戦していました。世界ランク的にみても、アメリカが決勝にいくと関係者含めそう思われていましたのでカナダとの対戦を予想していましたが、アメリカが最後にミスでカナダに敗れ3位決定戦の相手がアメリカになり、予想していなかった部分もありました。今回3試合目の戦いとなった、開催国イギリスとの試合では会場全体がものすごい声援で完全アウェーな状況の中でも選手たちが落ち着いて試合を行い、勝利することができ、日本の強さを世界にみせれたことが印象に残っています。
選手もスタッフもが口にした「あくまでも目標はメダル。リオにむけた世界3強への挑戦」

選手・スタッフが4年間一体となって戦ってきたウィルチェアーラグビー日本代表
川下直教(AXE)
メダルを取れなくて凄く悔しい思いがあるのですが、選手、スタッフそして日本で応援してくれたラグビー関係者の方々のおかげで、せいいっぱい力をだして戦い、かえってきました。次のリオにむけてまたあらためて気を引き締め頑張っていきたいと思います。
島川慎一(BLITZ)
メダルを目標に、これまで練習をやってきたのですが結果4位ということで、悔しい思いをしました。ただ選手・スタッフが一丸となってやってこれましたので、この結果を受け止めて次のリオにむけてやっていこうと思います。
三阪洋行(HEAT)
パラリンピックから帰ってきた時に、応援していただいた方からは今回の4位という結果について、「北京の7位に比べると躍進した」といわれるんですけど、我々のもとめてきたものはあくまでもメダルで、それを獲得できなかったということは悔しいのと同時に、今の力不足というものを素直に受け止めたいと思います。
よく、オリンピックには魔物がいる、というようにパラリンピックにも魔物がいて、準決勝でアメリカ(北京五輪では金メダルを獲得)が、カナダに敗れるという番狂わせがおこりました。そういう何があるかわからない世界で戦うことができたということで着実にレベルアップがはかれたという点で意義のあるオリンピックでした。
萩野晃一(BLITZ)
今回の反省としては、各選手と同じです。
新たに4年後にむけて必要なことは、選手としてはトレーニングや練習をする環境がほしい。今回3強といわれた、アメリカ・オーストラリア・カナダにおいて、オーストラリアは試合のデータ管理をしていた。アメリカとカナダでは無線でコート外との人とやりとりしていた。(日本代表においても)そういう戦術的なこともやっていくアナリストも必要ではないかと感じました。
岸光太郎(AXE)
メダルを逃したということは残念でしたが、自分自身としては初めてのパラリンピック、夢の舞台にたてたということ、様々な国と真剣勝負ができたこと、非常に貴重な経験だと思います。今後は新たな目標にむかっていきたいと思います。
トレーナー 本田梢
このチームはベテランがたくさんいます。チームは北京の後一旦解散して、新しいチームとして4年間、一緒に戦ってきたことに感謝しています。ただ12個のメダルをかけたかったです。メダルを獲得できなかったことはスタッフとしても責任を感じています。ただ私たちがメダルを獲得することは必ず、現実になると感じました。今後としては、選手もスタッフも新しい人材を育成、ラグビーが好きだという新しい世代が誕生してチーム全体成長しなければと思います。
トレーナー 涌井俊裕
この戦いで世界の3強とは、力の差があることを実感できた。
日本の弱点としては2番手・3番手という、いわゆる選手層のうすさが目立った思います。これからの4年間はそういう部分を意識してやっていきたい。