太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2025北九州大会直前、ここにも注目!レフリー・池田韻「レフリーとして存在感を出していきたい」 | ラグビージャパン365

太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2025北九州大会直前、ここにも注目!レフリー・池田韻「レフリーとして存在感を出していきたい」

2025/07/17

文●大友信彦


「男子のトップレベルのセブンズ大会を吹く機会は貴重で、意味のあるものだと思っています」

7月13日に秩父宮ラグビー場で行われた「なの花薬局 ジャパンセブンズ2025」を終えた池田韻(いけだ・ひびき)レフリーはそう話した。池田さんはこの大会で2試合のレフリーを担当。3位決定戦ではリーグワンから参戦したグリーンロケッツ東葛と、大学ラグビーの絶対王者・帝京大が対決。男子の異なるカテゴリー、それぞれのトップチームの戦いを、スムーズにさばいた。

ワンデートーナメントならではの難しさ


「国内ではセブンズというと女子が多いイメージがあって、男子の試合を吹く機会は少ないですから。この大会とピリカモシリ、国スポくらいです。ランスピードも、パスのスピードも『女子とは大きく違うなあ』と感じながら吹きました」

パリ五輪を最後にセブンズから15人制へ活動の場をシフトした桑井亜乃さんに代わり、日本協会のセブンズ女性レフリーの先頭に立っているのが池田レフリーだ。太陽生命ウィメンズシリーズはじめ、国内の女子大会では既におなじみ。昨季はリーグワンの公式戦でもアシスタントレフリーを務め、今年はワールドシリーズの下部大会、チャレンジャートーナメントのパネルレフリー入りし、世界へのステップを刻み始めた。

男子の試合を吹く機会は女性レフリーにとって貴重だという。強度の高い試合を経験しておけば、それほどでもない試合でも余裕を持てる。レフリーであれ選手であれ、あるいは他の競技でも当てはまることだろう。

だが、この大会には難しさもあるという。

「この大会の特徴は、普段セブンズをあまりプレーしていないチームが多いことですね。15人制と7人制のルールの違い、ルール運用の違いに慣れていない選手が結構います。15人制では許容されるけどセブンズではダメというプレーが結構ある。しかもこの大会はワンデートーナメントなので、特有の難しさがある。最初からトーナメントなので、選手にはプレッシャーがかかるし、私たちレフリーにもプレッシャーがあります」

ワールドシリーズやアジアシリーズ、太陽生命シリーズなど多くのセブンズ大会は2日間、あるいは3日間かけて行われ、多くの場合、1つ負けても決勝トーナメントに進むのは可能だ。レフリーにとっても選手にとっても、初日のプール戦で「慣れ」の時間を持てる。だがワンデー大会では最初の試合から一発勝負のトーナメントだ。ひとつ負ければ優勝はなくなる(負けてもコンソレーションや順位戦など大会を楽しむ道は残されているが…)。確かにプレッシャーはかかりそうだ。しかもセブンズに慣れていない選手が多いとしたら……確かに難しい場面が多くなりそうだ。

「それに、男子は一度のアタックで長く持っていくのが多い。ロングスプリントが多いところは大変だなと思いますね。女子はなかなかトライが生まれないというか、ディフェンスが頑張ってフェイズを重ねるケースが多いけれど、男子は得点がすぐに入る傾向があります」

難しい要素は多い。それだけに、自分のレフリングを検証するチャンスでもあるという。

「自分のパフォーマンスは去年のこの大会を吹いたときよりも上がってきたんじゃないかと感じます。アジリティの部分、フットワークの部分、男子のスピードにも対応できるようになりました。あと、課題は、自分の存在感をどう出していくか。姿勢やシグナルの出し方は、自分で映像をみて研究しています」

レフリーに求められるのは何よりも正確な判定であり、それを支える走力、フィットネスである――それは誰でもわかる自明なことだが、レフリー自身はその上に「存在感」を求める。それは言い換えれば「強さ」だ――そういえば、去年のこの大会は、パリ五輪へ向かう桑井亜乃レフリーの「壮行試合」でもあった。

「レフリーにはグラウンド上での強さも必要なんです。桑井さんにはそれがあります。いま、海外でワールドシリーズを吹いているレフリーはみんな、それができている。私は体も小柄だし、強さをアピールするのはちょっと難しいけど、それがレフリーとしての弱みにならないように、自分の強さ、雰囲気を作っていく必要があると思っています。グラウンドでどう見えるかを意識するようにしています」

レフリーにとってもサイズは武器だ。桑井亜乃さんは現役時代、サクラセブンズでも最長身クラス(身長171cm)の選手だったし、手足の長さはシグナルの見えやすさ、わかりやすさにもつながる。男子でも、リーグワンの三重ヒートで昨季までフランカーとしてプレーしていた近藤雅喜レフリーのような大柄で鍛えている体(現役時代の名鑑データはは189cm100kg!)だと、やはり頼りがいのある印象を与える。

「私も、筋肉を増やすトレーニングはしています。特に上半身ですね。選手とは違って、強さよりも見せる筋肉をつけるようにしています(笑)。あとはコミュニケーションの取り方ですね」

レフリーの存在感とは、イコール強さだけではない。レフリーが醸し出す空気感、雰囲気も重要なパートだ。池田レフリーといえば笑顔を思い浮かべるファンが多いだろう。柔らかい物腰で選手とコミュニケーションを取るマネジメント術は、選手にも観戦者にもストレスをため込ませない。そんなレフリングを見るのも観戦の楽しみだ。

女子7人制ラグビーの国内最高峰、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2025は、20-21日の北九州大会で再開する。この大会で経験を積んで28年ロス五輪を目指すのは選手だけではない。レフリーのマネジメント、パフォーマンス、シグナルも含めたビジュアルや表情にも注目して、大会を楽しみたい(池田レフリーは北九州大会には参加せず、次回は花園大会に参加予定)。

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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