エディージャパン、フランス代表と同組のプールEに「最も重要な空中戦が試合の鍵を握っている」 | ラグビージャパン365

エディージャパン、フランス代表と同組のプールEに「最も重要な空中戦が試合の鍵を握っている」

2025/12/04

文●編集部


12月3日、ラグビーワールドカップ2027・オーストラリア大会の抽選会が行われ、日本代表はプールEに入った。フランス代表、アメリカ代表、サモア代表と同組になった。抽選結果を終え、エディー・ジョーンズHCが取材に応じた。

ラグビー日本代表 エディー・ジョーンズHC

――2027年ラグビーW杯の組み合わせ抽選が終わりました。感想は?

W杯のドローは自分たちの対戦チームが決まったということ以外に何もなく、(予選プールで)対戦する3つのチームのことだけを考えていますし、初戦の相手が決まればそこにフォーカスをするだけです。

エディー・ジョーンズHC

エディー・ジョーンズHC



――今までにも対戦したことのあるチームが多いです。予選突破は必須だと思いますが……。

W杯を2年後に控えた今、各チームが本大会に向けた調整段階に入り始めているのだと思います。つまり、今後どのような動きを見せるかが重要となるわけです。フランスが世界トップクラスのチームであることは言うまでもありません。一方、サモアはワールドカップ出場権獲得に向け、激しい競争を勝ち抜かなければなりませんでした。


しかしサモアに関しては、W杯でこそ最高の選手たちが揃うことも承知しております。つまり真のサモアの姿は、ワールドカップの舞台で初めて見られるのです。アメリカは新たな指導体制のもと、新たな戦術、つまりハイキックを多用する戦術を使っています。現在の世界ラグビーにおいて、おそらく最も重要な空中戦が試合の鍵を握っています。

試合ごとに30回もの空中戦が発生しており、キックしてボールを奪い返す能力は、ほぼ2倍のポゼッション価値があります。試合データが示す通り、その重要性は極めて高いのです。今後、この3チームを特に注視していくことになります。我々はこれら3チームを打ち破る戦術を確立する必要があり、今後2年間でその構築に注力します。

――今回は新しいフォーマットになりました。今までと違う点、あるいは、やりやすい点、やりにくいところはありますか

あまり考えたことはありません。与えられた形式を受け入れるだけですから。

――W杯まで残り2年間で考えていることは

今年、特に印象深かったのは、アタックの適応力です。初年度は、我々のチームが超速ラグビーにおいて早いテンポの攻撃を展開できたことでした。しかし、試合でそれを20分間維持できたに過ぎません。それ以上は持続できませんでした。ところが今年はアタックを少し変えることができ、より適応力が高まり、少し違った方法でプレーできるようになりました。


その結果、我々はより競争力のあるチームとなり、打ち負かすのが非常に難しいチームへと成長しました。今後もこの姿勢を継続していきたいと考えております。先ほど申し上げた通り、キックは2027年W杯において、極めて重要な要素となるでしょう。その点は疑いようがありません。ルールが変更されない限りは。現時点では、その可能性は低いと思われます。

したがって、キックは重要となります。効果的なキックでボールを奪い返し、そこから素早く攻撃を仕掛ける能力が、我々の戦術の要となるでしょう。逆に、キックに対する堅固な守備も必要です。高く上がったボールが空中にある際、一対一の状況でクリーンキャッチできる確率は、現在わずか30%です。ですから、キックからのボール保持率を30%以上に高めることができれば、より多くの試合に勝利できる状況に立てるでしょう。その上で、我々はディフェンスのさらなる向上を目指します。

今年は著しい進歩を遂げています。今や選手たちは世界中のどのチームに対しても自信を持って守備できると確信しております。もちろん、フランスのような強豪と対戦する際には、優れた守備が不可欠です。これらの2つの領域こそが、ワールドカップで非常に打ち破りにくいチームを構築する上で極めて重要となるでしょう。

加えて申し上げますと、オーストラリアは気候の極端さが特徴で、タウンズビルは非常に広大で湿度が高く暑く、おそらく30度、湿度85%といった環境です。一方、メルボルンでは12度で小雨が降る中での試合もあり得ます。ですから我々は、両極端な環境条件にも適応できる試合運びを確立する必要があります。


それが今回のワールドカップの特異性です。ご存知のように、オーストラリアは巨大な島国であるため気候の変動が非常に極端なのです。例えばある週はタウンズビルで試合をし、翌週にはメルボルンでプレーする可能性もあります。寒くて雨も降る場所では、厚手のコートに手袋、マフラー、ニット帽といった防寒着が必要になります。その一方で、前週にはシャツを脱いで走り回っていたかもしれません。つまり、こうした環境変化に対応できる適応力が求められるのです。様々な条件下でプレーする方法を学ぶことが、重要な要素となるでしょう。

――同組になったチームとはネーションズチャンピオンシップやPNCでも戦うチャンスがあるが

素晴らしい点は、ご覧の通り、特にジョージア戦において、20キャップを達成した選手の数が増えたことです。そして現在、彼らはトップクラスの相手チームとの対戦でその20キャップを積み重ねているのです。そして今後2年間を見据えると、オーストラリアとの対戦の可能性も考えられます。

もっとも、現時点でオーストラリア戦が確定したとの連絡は受けておりません。ですから、この件に関しては皆様の方が詳しい状況かと存じます。試合の開催地や時間など、詳細が判明次第、航空券の手配を進め、確実に時間通りに現地入りできるよう手配いたします。そして、これらの選手たちにとっては、ワールドカップ前にさらに20キャップを積み重ねられることになります。

しかも、トップクラスの相手との対戦です。つまり、現在のチームの中核をなすこのグループはW杯に向けて約40キャップの選手を擁する可能性があり、経験豊富な選手たちと言えるでしょう。そして、チーム全体では約600キャップの選手を擁することになります。昨年を振り返ると、150試合程度の代表経験で戦うことが多かったのですが、今年は250~300試合程度、来年は350~400試合程度となる見込みです。そしてワールドカップ時には600試合程度に達するでしょう。

これは決して悪い数字ではありません。これらの選手たちは、トップクラスの相手との対戦を通じて貴重な経験を積むことになります。ですから、ネイションズカップに参加できることは非常に幸運です。もし(来年8月に)オーストラリアとの試合が実現すれば、再び選手たちにとって貴重な経験となるでしょう。

――先ほど予選プールのことしか考えていないとおっしゃいましたけども、エディーさんが目指しているベスト8に入るには決勝トーナメント1回戦に勝つ必要があります。今回の組み合わせでE組1位だったらD組の1位アイルランド、スコットランド、E組2位だったらA組の2位のニュージーランドかオーストラリアと対戦します。オーストラリアとW杯で対戦すれば、エディーさんにとって感慨深い試合になる可能性もありますね

申し上げました通り、私自身は特に考えを持っておりません。我々の目標は依然としてベスト8進出です。しかし、我々が気にかけるべき唯一のことは、予選プール以降の計算については心配することではないということです。それは報道関係者の皆様が考えるべきことであり、皆様はそれを深くお考えになるでしょう。

しかし我々にとって重要なのは、目の前のことに集中することです。そして2027年に我々の前にあるのは、予選プールの3試合のみです。そして、そこを確実に成功させることが肝要です。それが我々にできる唯一の成功です。我々はそこに集中してまいります。

――イングランドの指揮官時代からフランスと何度も対戦していると思います。フランスに勝つためにどういうものが大事か。

フランスは強力なFW陣を擁しております。22mライン付近に侵入すると、9番を中心に3人の選手で攻撃を展開する戦術を取ります。そのため、大型選手に対しては2人で対応する必要があります。ラック周辺の守備においては、極めて高いレベルが求められます。さらに、SHデュポン選手もおりますが、前十字靭帯からの復帰後の状態は未知数です。

現在トゥールーズで彼とプレーしている選手(齋藤直人)が我々のチームにいますので、彼に関する有益な情報を得られるでしょう。さらに、彼らは電光石火のスピードを誇るアウトサイドバックスを擁しています。つまり非常に優れたチームなのです。とはいえ、我々も可能な限り万全の準備を整える必要があります。他チームの動向を過度に気にするわけにはいきません。

最善の準備を整える必要があります。W杯に最も準備の整ったチームとして臨むことが肝要です。それが我々のコントロール可能な範囲であり、我々が確実に管理すべき点であり、我々が実行すべきことです。ですから我々は状況を主導し、結束した努力で相手を封じ込めなければなりません。

――2015年南アフリカと対戦すると決まってから、練習のいろんな試合に関しても南アフリカとやる時のための練習や作戦を立てた。今回例えば試合の順番はきまっていませんけど、フランスに勝つためのことだけをやっていくのか。

明日から(※日本語)。3つのチームに関して明日から考え始めて、初戦の相手が決まったらその対戦相手に関して考えます。フランスが初戦かはわかりません。初戦の相手にフォーカスします。

――最初の相手にフォーカスするとおっしゃいましたが、それこそフランスが最初ではなくなった時でも最初の試合の相手にフォーカスするという理由は?

今回が私にとって5度目のワールドカップとなります。ワールドカップの戦いについては多少心得があるかもしれませんが、本当に気にかけるべきは目の前の試合だけです。その試合を確実に勝ち取る必要があります。先を見据えすぎてはいけません。2015年は幸運にも南アフリカが最初の対戦相手でしたので、南アフリカに集中できました。

しかし、サモア戦に臨む際にフランスに集中していたらそれは無謀な行為でしょう。ご質問の意図は理解できますが、経験から申し上げますとその時点で対応可能な試合に集中すべきです。そして、選手たちもその試合に集中したいのです。選手たちは、その次の試合のことを考えたくはありません。目の前の試合のことを考えたいのです。ですから、まずは2月3日だったと思いますが、スケジュールの結果を見ましょう。試合の順番が確定してから、その先を考えればよいのです。

――5回目のW杯ということですけども、毎回抽選に臨む時はどんな気持ち?

抽選前には特に何も感じません。しかし抽選後こそが本当にワクワクする瞬間です。なぜなら、目指すべき目標が明確になるからです。W杯の素晴らしい点は、全てのチームが最高の状態で臨むことです。世界最高の選手たちが集結します。満員のスタジアムでプレーできます。観客の熱気は素晴らしく、審判も最高の状態で、全員が最高の状態です。

W杯に参加できることは本当に光栄です。そして自分がどのグループに入ったかを知ると、どう戦わなければならないか、何を準備すべきか、という感覚が湧いてきます。そして次の段階は対戦順の決定であり、今夜、その話がありました。

しかしその前に、日本では来週大学の試合が開催されます。私はその試合を観戦することを楽しみにしており、新たな才能を発見できるかどうかを見届けたいと思います。FB矢崎が早稲田大学でどのように復活し、活躍されるか楽しみにしております。

今週の早明戦の試合も観戦したいと考えております。ぜひ皆様も試合にご来場ください。というのも、日本のラグビーの強みの一つは大学ラグビーにあるからです。ですから、私は大学ラグビーを観戦し、その後リーグワンが始まります。

私の古巣であるサントリーは、初戦でリコーと対戦すると思います。これは伝統的に彼らにとって最も厳しい試合の一つです。

そう、確かに「いよいよワールドカップだな」という実感が湧いてきます。しかしその前に、(日本のラグビーシーンでは)見どころ満載の試合が続きます。

――フランスに対して日本としては未勝利ですけど、日本とフランスの力関係はどのように考えられているんですか

先ほど説明した通り、フランスは強力なFW陣を擁しています。彼らは自らのプレースタイルを明確に理解し、さらにトゥールーズのコンビネーションがあります。最高の状態では、おそらく7~8人のトゥールーズの選手を擁してきます。そのため、チームメンバー間の結束力が非常に高いのです。

そして彼らは、フランスのラグビー特有のフィジカルなプレーを展開し、そこから素早くボールを移動させてフレアへと展開します。ですから、非常に優れた守備力が必要であり、彼らのロングキック戦術にも対応できなければなりません。おそらく世界最高のロングキック戦術を有しております。データ上、世界最長距離のキックを放つチームと言えるでしょう。この戦術に対処する能力が求められます。今後2年間で確実に練習を重ねるべき点であり、ロングキックを多用するチームに対する防御策を磨くことになります。

――ファンに向けて、W杯でベスト4以上を目指す上での意気込みをお願いします

申し上げました通り、我々はW杯で優勝するチームでありたい。誰もが観たいと思うチームでありたい。そのためにはベスト4入りが絶対的な目標となります。今後2年間、チームがその結果を達成できる最善の態勢を整えるべく、あらゆる努力を尽くします。その実現には、我々の限界を超えるプレーが求められます。並外れた努力が必要であることも理解しております。しかし、それが不可能だという理由はありません。

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