12月11日(火)に丸ビルホール&コンファレンススクエアで開かれた「エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC) チャリティートークショー&サイン会」の収益を元に、14日(金)16時から、東日本大震災の復興支援を目的とし、宮城県・気仙沼市の気仙沼市総合体育館(ケーウェーブ)にて「PUSH東北!」と銘打たれたエディー・ジョーンズ日本代表HCによる高校生ら約70名を対象としたラグビークリニックが開催されました。

このクリニックは、松尾雄治さんら新日鐵釜石V7時代のOBらが設立した「スクラム釜石」、神戸製鋼V7時代の中心選手で、阪神大震災の経験から復興支援活動を続ける大西一平さんが設立した「OVAL HEART JAPAN」、気仙沼出身&元東芝府中のCTB石川敏さんが立ち上げた「復興支援機構」、そして当サイトが共同で企画したものです。

元東芝府中のCTB石川敏さん

神戸製鋼V7時代の中心選手で、阪神大震災の経験から復興支援活動を続ける大西一平さん

参加者には、飲料をはじめ各種グッズがプレゼントされた
クリニックに参加した子どもたちに飲料を提供してくださったサントリー様や、グッズやスタッフ派遣などではサントリーサンゴリアス様、パナソニックワイルドナイツ様、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス様、クリニックへのサポートスタッフを派遣してくださった釜石シーウェーブスRFC様など、各チームにご協力もいただきました。

第1部はセミナー。70人を前にジョーンズHCが直接ラグビーに必要なものを語った。
気仙沼向洋高校ラグビー部、女子部員が4人いる大船渡東高校、釜石商工高校、サントリーのPR畠山健介選手を輩出した鹿折少年ラグビースクールの子どもたち、佐沼や宮古などからの参加者も含めて総勢70名ほどが参加しました。クリニックは2部構成で、1部は16時からは1時間弱はジョーンズHCの講演会が「エディー・ジョーンズの監督学」(東邦出版)の著者で、今回のクリニックのきっかけを作った気仙沼市出身&当サイトのスーパーバイザーも務めるスポーツライターの大友信彦氏の進行で行われました。

当初、はにかむ高校生を前に直接指止しで答えを求めるジョーンズHC
ジョーンズHCは「どうしてラグビーを始めたのか?」という問いかけから始め、「選手として大事な4つのポイント」を、身振り手振りや実例を挙げながら説明しました。4つ目の「自分の役割と責任」というポイント説明するとき、講演会の前、初めて津波による被災地を見て回ったジョーンズHCはこう述べました。

「今日、畠山選手の実家があった場所も見てきました。建物の基礎だけを残して何もなかった。
ラグビーに限らず、自分自身でコントロールできるものは自分で管理しないと行けない。今、東北で被災地でも自分たちでコントロールできるものを管理することが、次に東北がどう生まれ変わるかにかかっていると思います。東北を日本で最も勢いある地域にするためにはどうしたらよいか。今も昔も、東北には風光明媚な場所がたくさんあります。みなさん一人一人が復興に関わっています。

スポーツライター大友信彦さんがジョーンズHCに質問。欧州遠征での貴重な話を披露した。
ラグビーも同じです。試合でミスをしたら、ミスは世界のトップの選手でもするものですが、落ち込むのではなく次にどうするかと考えてほしい。それが今できることをコントロールするということです。自分が次に何をしたら勝てるか常に考える。それが他のチームとの違いを生み出す力になります」
最後には参加している高校生や先生などの質問に答え、講演会は終了した。会場を体育館に移して、第2部のクリニックが行われた。ジョーンズHCが中心となり、スクラム釜石代表&元日本代表PR石山次郎さん、釜石シーウェーブスからは元日本代表LO桜庭吉彦さんとNO8アンドリュー・スティード選手、昨シーズン、サントリーサンゴリアスの2冠にPRとして貢献した小川真也さんがサポートコーチとなり、高校生ら約70名の指導にあたった。

講演会でも熱のこもった指導が始まると・・・


釜石シーウェイブスのNO8アンドリュー・スティード(真ん中)と元サントリーPR小川真也さん(右)
クリニックは1時間ほどだったが、「私はぶれません」とジョーンズHCが言うように、日本代表でも行っている練習と変わらない3対2、7対4などが行われた。コンタクトした1人目の選手はしっかり遠くにボールをリリースし、2人目はボールを越えて顔を上げつつまっすぐラックに入ってフォローする、パスを受ける選手は「アーリーキャッチ」「ストレートラン」を意識しディフェンスを引きつけてパスをし、外の選手にスペースを作るといった練習が繰り返された。

アーリーキャッチを指導するジョーンズHC
最初は日本代表の率いる世界の名将が教えるということで、高校生らからは少々緊張が感じられた。だが、ジョーンズHCの自身がお手本を示すなど丁寧な指導と「今のは、まあまあ」「良くなった!」「完璧!」などと日本語で声を掛けていくと、選手たちの動きがみるみる良くなり、手に取るように表情がイキイキとしていくのがわかった。「日本代表でも高校生でも変わりません。日本人は世界と比べて小さい。だからボールを素早く動かして外にスペースを作る練習をしました。日本の高校生を見ると、アーリーキャッチとストレートランの意識などが足りません」(ジョーンズHC)


緊張感ある中でジョーンズHCが直接指導にあたった。

ストレートランの練習。体育館に熱気が生まれた

練習終了後、パナソニックワイルドナイツの選手たちがサインを書いたラグビーボールが進呈された。ジョーンズHC「パナソニック?」

練習終了後のサイン会には、最後の一人まで丁寧に対応したジョーンズHC

スクラム釜石のマスコットキャラクター「なかりん」
参加者全員による記念撮影の後は、トップリーグチームからのグッズと、ジョーンズHCが持参したアディタスのミニタオルが配られ、サイン会が行われた。ジョーンズHCはもちろん、桜庭氏、「エディー・ジョーンズの監督学」が会場で販売されていたこともあって大友氏、そしてスクラム釜石のマスコットである「なかりん」らが高校生らに囲まれ、時間の許す限りサインや写真撮影に応じ、あっという間の2時間が終了となりました。

チャリティートークショーに来ていただいた皆様、当サイトの購読者様、企画に賛同してくださった各団体様、クリニックに協力してくださった各チーム様、素晴らしい通訳で講演会&クリニックを円滑に進めていただいた和田竹美さま、そして何よりも日本代表のHCとしての職務で忙しい合間を縫って気仙沼まで足を運んでくれたエディー・ジョーンズHCのおかげで今回のクリニックを実現、成功させることができました。大変感謝しております。ありがとうございました!