サクラフィフティーン、ワールドカップ前最後のテストマッチでイタリアに敗れるーここでの課題を糧に本大会へ挑む | ラグビージャパン365

サクラフィフティーン、ワールドカップ前最後のテストマッチでイタリアに敗れるーここでの課題を糧に本大会へ挑む

2025/08/10

文●編集部


イングランドで22日に開幕するラグビーワールドカップ(女子15人制)で初の8強進出を目指す女子日本代表(サクラフィフティーン)が9日(日本時間10日未明)、ワールドカップ前のラストゲームとなるイタリア代表とのテストマッチを行い、15-33で敗れた。イタリアとの通算対戦成績は1勝6敗1分け。

サクラフィフティーンは4月の北米遠征でアメリカ代表を39-33で破る歴史的なカード初勝利をあげると、若手をテスト起用して戦ったアジア選手権(アジア・エミレーツ・チャンピオンシップ)を経て、7月にはワールドカップ本番でも戦うスペイン代表とのテストマッチシリーズ2試合に32-19、30-19と連勝。

国歌斉唱

国歌斉唱


ワールドカップに臨む代表32人を決定し、8月2日に事前合宿地のイタリアに移動。時差解消も含め1週間の現地トレーニングを経て、この日のイタリア戦を迎えた。

サクラフィフティーンはこの試合に向け、前戦となる7月26日のスペイン戦から先発4人を変更。スペインとの第2戦で足首を捻挫したFB松田凜日に代わり西村蒼空がFBで先発し、負傷からのリハビリ最終段階でスペイン戦を欠場したPR加藤幸子が先発に、町田美陽がリザーブに入った。ワールドカップに向け、負傷から復帰したキープレーヤーにゲームタイムを与え、ワールドカップに向け選手の復調ぶりを確認する狙いがうかがえた。

加藤幸子

加藤幸子


町田美陽(後ろ)向來桜子(手前)

町田美陽(後ろ)向來桜子(手前)


イタリア代表とはワールドカップでは2017年の9位以下戦準決勝で0-22、2022年のプール最終戦で8-21と敗れている。ツアーではレスリーHCが着任1年目の2019年にアウェーで17-17と引き分け。2023年の遠征試合で25-24と初勝利をあげたが、その2週間後に行われたWXV2では15-28で敗れた。過去1勝5敗1分。8月4日付の世界ランクは日本が11位でイタリアは7位だ。

試合は現地時間19時30分、この試合で日本女子初の50キャップに到達した齊藤聖奈が両チームの先頭で入場。ビジターチームへのリスペクトが嬉しい。

両チームのアンセム斉唱を経て試合が始まる。先手を取ったのはイタリアだ。2分、日本のキックを捕ってハーフウェーでフェイズを重ね、6フェイズでWTB11ディンカが日本DFの真ん中をブレイク、裏に出るとそのまま50mを走り切って先制トライをあげた。CTB12リゴーニがコンバージョンを決め、イタリアが7点を先行する。

日本もすぐに反撃する。8分、イタリアのキックチェイスのオフサイドで得たPKをSO大塚が右ゴール前へ好タッチキックを蹴り、スペイン戦で猛威を発揮したラインアウトモールで勝負。公家明日香―佐藤優奈のホットラインでボールを確保するとサクラフィフティーンは低い姿勢でモールを押す。イタリアはコラプシング。日本はもう一度タッチに蹴ってモール勝負を挑む。しかしここはイタリアがうまくプッシュを止め、日本はサイドへアタック。ゴールライン目前の攻防が続いたが、9フェイズ続いたところで日本FWのサポートがわずかに遅れてイタリアがターンオーバー。日本は最初の得点機を逃してしまった。

ラインアウト、佐藤優奈

ラインアウト、佐藤優奈


しかし日本はその後も、ラインアウトでの安定したボール獲得を軸に敵陣ステイに成功。20分過ぎまでのほとんどの時間をイタリア陣で戦い、SH津久井萌やSO大塚朱紗のキックを使ってイタリアDFの裏を狙うが、イタリアBKはそのたびによく帰り、日本にゴール前エリアへの侵入を許さない。日本も自陣10m線まで戻されたラインアウトで2度にわたってボールを奪うが、そこからのボール継続がうまくいかない。

松村美咲

松村美咲


23分、WTB松村美咲のキックからボールを奪われ、自陣ゴール前まで攻め込まれる。しかしここはゴール前のラックでペナルティーを奪いピンチを脱出。直後にはDFでボールを奪うとSH津久井が絶妙の判断でゴール前へ好キックを蹴り、蹴り出させて相手ゴール前ラインアウトのチャンスを得る。だがこのラインアウトでイタリアはコンテストを仕掛け、日本はこの試合で初めてスチールを許す。イタリアはそこからWTBディンカが突破し、FBグランツォットが約70mを独走して右隅へトライ。7-7の同点に追いつくはずだった日本は逆に0-12まで点差を広げられてしまった。

大塚朱紗

大塚朱紗


日本も30分、ハーフウェー付近でFL長田いろは主将が好スティールでPKを奪うが、大塚のキックがタッチに出ず、反撃を浴びる。33分、日本は自陣22m線付近のラインアウトで相手ボールを奪うが大塚のキックがノータッチとなり、カウンターアタックを浴び、34分、イタリア②グリオリに3本目のトライを許してしまい、0-19。

日本はテリトリーでもポゼッションでも優位に立ち、ディフェンスに回ってもブレイクダウンで粘り強く戦ったが、サイズに勝るイタリアに接点で押し込まれてしまい、そこからの外展開でBKの隙間を突破されてしまう。スペイン戦ではCTBだった畑田がWTBに回り、同じくスペイン戦を欠場していた西村がFBに入る布陣をとったが、ディフェンスの連携はもうひとつ。

弘津悠

弘津悠


また、キックも危険なエリアに落としてはいるのだがイタリアバックスリーの反応が良く、チャンスの萌芽が本当のチャンスにつながらない。アジアやスペインとの戦いとは一段レベルの上がった相手に対して武器とするには日本のキックはまだ精度を上げなければならないようだ。

齊藤聖奈

齊藤聖奈


それでも0-19とリードされた日本はハーフタイム直前に反撃。右中間ゴール前でスクラムを得ると、CTB弘津悠、No8齊藤聖奈が前進。そこから右WTB松村が逆サイドへ引っ張り、相手DFを引き付けて左隅のWTB畑田へパス。本来はCTBながらWTBで起用された畑田が左隅へ飛び込んだ。日本は前半のラストプレーでこの試合初得点。5-19として折り返した。

松村美咲

松村美咲


畑田桜子のトライ

畑田桜子のトライ


14点差は十分に逆転可能な数字だ。日本は逆転を目指し、リスタートから再びイタリア陣に侵入。大塚の好キックで攻め込むと、10フェイズにわたって攻撃を継続。しかしイタリアの防御を破れず、逆にラインアウトでボールを奪われると相手カウンターを浴び、さらにPKからゴール前に攻め込まれ、51分、ラインアウトモールでトライを奪われてしまう。日本が3度挑んで取り切れなかったモールのトライを、イタリアは一発で取り切ってみせた。


モールを自らの主武器として磨いてきたサクラフィフティーンの闘志に火が付いた。そこにベンチからインパクトプレーヤーが次々と投入される。PR加藤に代えて若い峰愛美、吉村に代えてベテラン櫻井綾乃を投入。54分、日本のキックオフをイタリアが落球して反則。

櫻井綾乃

櫻井綾乃

そのPKでゴール前に攻め込んだ日本は、左ゴール前のラインアウトからモールを一気に押し込みHO公家明日香が左隅に抑えた。10-26。日本はさらに追撃するべく54分、FBに山本実、FLに向來桜子、No8ンドカ・ジェニファを、さらに63分には大器PR町田美陽、64分には高速仕掛人のSH阿部恵を投入してゲームのスピードアップを図る。

阿部恵

阿部恵


だがイタリアもしぶとい。65分、日本のハイタックルでゴール前ラインアウトのチャンスを得ると、このモールを押し切ってHOグリオリがこの試合2本目のトライ。

10-33、23点差に広げられた日本も反撃する。それまでのキック主体からラン主体に切り替え、WTB畑田、松村、FB山本実の好走から相手ゴール前に攻め込むと、69分、右ゴール前約10mの位置からラインアウトモールを押し切り途中出場のHO谷口琴美がトライ。トライを狙うにはやや長いかと思われた位置から一気にモールを押し切ったのは、モールに磨きをかけてきたサクラFWの面目躍如だった。

山本実

山本実

そしてラスト10分の攻防は、イタリアの18点リードのまま時間が過ぎた。イタリアは日本ゴール前のラインアウトからラックを連取して責め立てるが日本はゴールライン上のディフェンスで逆にボールを奪いピンチをしのぐ。残り3分、逆に日本がイタリア陣深くに攻め込み、スクラムからSH阿部恵が仕掛けるなどトライラインを狙うがイタリアの防御も譲らない。結局、PKから攻め込もうとした日本のアタックにイタリアが絡んでPKを獲得し、タッチに蹴り出して試合は終わった。


50キャップを達成した齊藤聖奈

50キャップを達成した齊藤聖奈


50キャップを祈って集合写真

50キャップを祈って集合写真

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