サクラフィフティーン、こだわった自分たちのラグビーでスペインに勝利!未来につながる価値ある1勝 | ラグビージャパン365

サクラフィフティーン、こだわった自分たちのラグビーでスペインに勝利!未来につながる価値ある1勝

2025/09/08

文●編集部


サクラフィフティーンこと、ラグビー女子日本代表がワールドカップ2025のプールマッチ最終戦で初勝利をあげた。

先手を取ったのは日本だった。開始早々、敵陣深くに攻め込むとラインアウトモールで前進。いったん相手ボールのスクラムになるがそこを押し返してボールを取り返し、相手ゴール前でマイボールスクラムのチャンスを得ると、SH阿部―WTB今釘―FB西村とつないで左隅に先制トライ。大塚のコンバージョンは外れるが日本が5点を先制する。

前半6分、西村蒼空のトライ

前半6分、西村蒼空のトライ



今大会初先発で持ち味を出した阿部恵

今大会初先発で持ち味を出した阿部恵

スペインは11分、日本陣22m線手前で得たPKをSHデコレスがクイックスタートしてHOエレラがトライし、コンバージョンも決まって7-5と逆転。日本はすぐに相手陣に攻め込むが、最後のフィニッシュで精度を欠き、得点できず。逆にスペインは38分、日本陣深くに攻め込むと12フェイズまで攻撃を継続して38歳のベテランLOカステロがトライ。日本は前半、ボール支配率でも地域獲得でも優勢に試合を進めながら、スペインが14-5とリードを広げて折り返す。

WTB松村美咲

WTB松村美咲


CTB古田真菜

CTB古田真菜


SO大塚朱紗

SO大塚朱紗


高いワークレートを見せたWTB今釘小町

高いワークレートを見せたWTB今釘小町


しかし後半は日本の時間となった。

日本は後半開始からSH津久井萌を投入。阿部恵の速いテンポでスペインを振り回した前半からFWを使う作戦にスイッチした。

46分、連続PKで相手陣22m線付近のラインアウトを得ると、FL長田いろは主将が得意の細かいステップで相手タックルを外してブレイクし、4人抜き独走。テストマッチ通算14号トライを決め、SO大塚がコンバージョン成功。12-14と追い上げると、56分には再びPKからのタッチキックで相手ゴール前に攻め込み、ラインアウトからFWが執拗にアタック。再びゴール前でPKを得るとクイックで仕掛け、PR北野和子が左中間にトライ。17-14と逆転する。

後半5分反撃の狼煙をあげるキャプテン長田いろはのトライ

後半5分反撃の狼煙をあげるキャプテン長田いろはのトライ


香川メレ優愛ハヴィリの突進

香川メレ優愛ハヴィリの突進


後半17分・北野和子の逆転トライ

後半17分・北野和子の逆転トライ

さらに61分。やはりハーフウェー付近から連続PKで相手ゴール前ラインアウトに持ち込むと、モールにすぐさま弘津、古田の両CTBも参加。モールが崩れるとトライライン間際でFWが再三密集サイドをえぐってから右へ不利WTB今釘が右中間にトライし22-14。

後半22分・今釘小町のトライ

後半22分・今釘小町のトライ



そして69分には、左22m線手前のラインアウトからまたもモールを猛プッシュ。約20mのロングドライブで相手トライラインに迫ると再びFWが執拗にサイドアタック。あえてBKにボールを出すことなく20フェイズにわたって攻撃を続けた末に弘津のHIAでピッチに戻っていたNo8ンドカ・ジェニファが左中間にトライ。山本実がコンバージョンを決め29-14。2チャンスでも追いつかれない15点差に広げた。

後半29分・ンドカ・ジェニファのトライ

後半29分・ンドカ・ジェニファのトライ


後半無得点だったスペインも最後は意地を発揮。78分にハーフウェー付近のラインアウトからオフロードパスをつないで日本陣深くに攻め込み、途中出場の19歳LOマルチネスがトライ。29-21まで追い上げ、さらに日本陣22m線まで攻め込んだが、最後は密集で日本がターンオーバー。津久井がタッチに蹴り出しノーサイド。日本がワールドカップでは2大会ぶり、プールステージでは1994年の第2回大会でスウェーデンに勝って以来実に31年ぶりとなる勝利をあげた。サクラフィフティーンは10日に帰国する。

レスリー・マッケンジーHC

レスリー・マッケンジーHC、今釘小町と

レスリー・マッケンジーHC、今釘小町と


「後半ではポジティブに我慢しながらプレーするようにということで、それが結果に現れました。テリトリーやボール保持でも勝っていましたが、冷静に自分たちを信じ、我慢してやってくれました。選手たちが見せてくれたことを誇りに思います。現実を確認したのが3年前の前回のワールドカップでしたが、今回のワールドカップでは、私たちが希望する結果とはなりませんでしたが、学びがあり、そして私たちが何が出来るかということを実感できました」

左から川村雅未・長田いろは・大塚朱紗・阿部恵・向來桜子

左から川村雅未・長田いろは・大塚朱紗・阿部恵・向來桜子

――後半に改善できたのは、ハーフタイムにどんな言葉をかけたからなのか。


「自分からかける言葉で劇的に改善されるような魔法の言葉はありません。前半の苦しい時間を我慢できたことが一番。この試合にかけてきた何週間、何カ月間の思いが強かった分、点を取り急いでしまうところが特に前半は見られたけれど、後半はそこを修正して、自分たちの形に戻すことができた。レフリーがブレイクダウンのところを細かく見てくれたことも良かった」


――コーチとしてワールドカップで初めての勝利の感想を。


「最も意味があると思うのは、チームとして我々が準備してきたことが実を結んだこと。日本の女子ラグビーが世界の人たちに認知されたことだと思います。これが選手たちにとってもっとも意味のある事だと思うし、私にとっての意味です。私としては、この大会でサクラフィフティーンの実力を世界中に見せたかった。それを今日はできたと思う。最初の2試合でもある程度見せることはできたと思うけれど、今日は特に見せることができた。このチームと一緒に働くことができたことは私にとってとても幸せなことでした。このチームが大好きです」

全てを出し尽くしたサクラフィフティーン

全てを出し尽くしたサクラフィフティーン

長田いろはキャプテン

長田いろはキャプテン

長田いろはキャプテン


「現地での応援、そしてテレビの前での応援、本当にありがとうございました。この試合は、私たちが次に向けて、女子ラグビーの未来に向けて、どう貢献できるか、どうつなげていけるかということを体現した結果だと思います。スペインの凄く良いプレッシャーもあったのですが、私たちの準備してきたことを出して、スコアにつなげ勝利することができました。皆のことを誇りに思います」

――前半と後半の戦いを振り返ると。


「前半は自分たちでペナルティーを重ねてしまい、モメンタムを作ることができなかったけれど、後半修正できたところに自分たちの成長を感じることができた。試合はタフな展開になることがわかっていたし、今日のスコア(29-21)も、日本でやった2試合と似ている(32-19、30-19)。日本で2試合を戦った経験が生きたと思います」

――リードされて折り返したその後半、最初の長田キャプテンのトライは試合の流れを変えました。あのトライはどのように決めたか振り返っていただけますか。


「スペインのラック周りのディフェンスが幅を取るようになってきて、内側にスペースが見えたのでユナ(LO佐藤優奈)に『ちょうだい』と言ってボールをもらって、あとはトライをとってやるという気持ちで走りました。どうやって相手を抜いたのかはよく覚えていませんが、フットワークを使って相手のタックルをかわしたんだと思います」


――そこから後半は徹底してFW勝負。それはハーフタイムに確認したことなのですか。


「FWでいけるという共通認識はあったので、みんなFWでトライを取り切ろうという意識はあったと思います」

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