イングランドで開かれているラグビーワールドカップ2025女子大会に出場しているサクラXVこと女子日本代表は31日、エクセターで大会2連覇中の女王ニュージーランドと第2戦を行った。
日本は風下の前半4分にWTB畑田桜子が先制トライをあげたが、そこから6連続トライを奪われ前半は5-38。風上に回った後半は2トライを返したが、ニュージーランドも終盤に3連続トライ。日本は19-62で敗れた。

入場するサクラフィフティーン

国歌斉唱
日本はキックオフ直後のプレーで相手キックを捕球しようとしたFB西村がSO大塚と交錯して足を負傷。開始0分で負傷交代するという緊急事態となったが、山本実がSOに入ってカバー。自陣ゴール前のDFでPKをうばうとそこからSH津久井のキックで攻め返し、4分、左のラインアウトでモールを押してからの右展開でSO大塚―CTB弘津とつなぎ、WTB畑田が右隅で相手タックルを受けながら押さえてトライ。大塚のコンバージョンは外れたが日本が5点を先制した。

津久井萌のボックスキックで前進

畑田桜子の先制トライ
日本は次のキックオフレシーブからも自陣でボールを継続。ラインアウトで相手ボールを2度奪うなど女王ブラックファーンズを相手に互角以上の戦いを続けたが、13分、自陣からのキックでカウンターアタックを浴び、WTBポーシャ・ウッドマン・ウィクリフがファーストタッチで50mを独走。男女を通じてニュージーランド史上最多記録となる通算50号トライ。

低い姿勢でブレイクする古田真菜
さらに16分には右ラインアウトからの左展開でFLミラーが40mを独走。序盤は勤勉なタックルでNZのリズムを寸断していた日本だったが、NZはBKとFWそれぞれのエースランナーが豪快な個人技で連続トライを奪い逆転。ここからNZは一気に攻撃を加速させ、25分にWTBヴァハコロ、30分にFBソレンセンマギー、35分にFLトゥクアフ、39分にSHポウリレーンがトライ。風下の日本は自陣からなかなか脱出できず、先制トライのあとは6連続トライを献上し、前半を5-38と大きくリードされた。

WTBの起用に応えた畑田桜子
後半、風上に回った日本は4分、CTB古田のタックルとSH津久井のジャッカルでPKを奪って相手陣に攻め込むと、7分、左ゴール前ラインアウトからモールを押してトライラインに肉薄、さらにラックを連取してSH津久井がねじ込み左中間にトライ。大塚のコンバージョンも決まり12-38とする。

後半7分・津久井萌のトライ
だがNZは直後の50分、キックオフ直後のスクラムから右→左の方向転換でFBソレンセンマギーが左タッチ際をすり抜けてトライ。すぐに12-43と点差を取り返す。

今釘小町
それでも日本はそこから反撃。風下の自陣でボールをキープするNZに対しDFでプレッシャーをかけ、ミスを誘うとWTB今釘の好キックで敵陣深くへ攻め込む。NZの粘りのDFの前に一度は自陣に戻された日本だったが、24分、弘津が自陣から蹴ったショートキックを自ら捕球してチャンスを作って相手ゴール前に攻め込み、PKからゴール前ラインアウトに持ち込むと、27分、モールを押してペナルティートライを奪う。

弘津悠
このプレーでNZは途中出場の19ベイフィールドが2枚目のイエローカードを出され退場。日本は19-43と点差を詰め、残り13分は数的優位を得て戦うというチャンスを得た。

ンドカ・ジェニファ
しかし、ここから加速したのは逆にNZだった。次のキックオフで日本CTB小林が転びながら好捕したところへジャッカルに入ったFLミラーがそのまま独走トライ。すぐに点差を取り返すと、次のキックオフレシーブからも攻撃を継続。30分にFBソレンセンマギーが日本のタックルを次々と外して約60mを独走してハットトリックとなる3本目のトライ。

佐藤優奈

峰愛美
32分にはソレンセンマギーのブレイクからWTBウッドマン・ウィクリフがビッグゲインし、22ホームズがトライ。NZから見れば、風下に加え数的不利となってキックを封印したのが逆に強さを増幅させたかもしれない。

小林花奈子
それでも日本は19-62と大差をつけられても果敢にチャレンジ。残り3分を切って敵陣ゴール前のラインアウト、さらにスクラムのチャンスを得てトライを狙い、ロック佐藤、プロップ峰が黒ジャージーの中を前進、最後はWTB今釘にボールがわたるがトライラインまであと1mで惜しくもタッチに出されトライならず。19-62のスコアで試合は終了した。
日本は2連敗。この試合に先立ち別会場で行われたプールCもう1試合はアイルランドが43-27でスペインを破り、ニュージーランドとアイルランドが決勝トーナメント進出。日本とスペインのプール戦敗退が決まった。


スタンドの観客に挨拶するサクラフィフティーン
なおスペインはアイルランドから5トライをあげ、2連敗ながら勝ち点1を獲得した。日本とスペインは7日、ヨークで、互いに今大会初勝利をかけて最終戦を戦う。
レスリー・マッケンジーHC

レスリー・マッケンジーHC
「世界チャンピオンのNZとワールドカップのプールマッチで対戦できるというのは大きなチャレンジでした。カオスになった局面で数か所、得点を許してしまったところがあったけれど、エリアを獲得できたところもあったし、アクティブに体を当てていけたところもあった。全般的にはポジティブにとらえています。最終戦は、スペインも同じように考えているだろうけれど、自分たちができるベストのプレーをおみせしたい」

今持てる力を出し切ったサクラフィフティーンに拍手が贈られた
――スコアを振り返ると
「スコアそのものは、NZにはチャンスに仕留めきる力があったことを反映していると思う。一度ボールを与えてしまうとトライを取り切られてしまう。我々はツーショルダー(2人がかり)のタックルで止めていこうとしたけれど、粘ったときにこちらのバックスペースのディフェンダーが足りなくなったり、向こうの攻撃力が一枚上だった。ただ、こちらもスコアには反映されないところでよいところがたくさんあった」

ブラックファーンズにファーストパンチを食らわせた
――開始早々にFB西村が負傷退場するという誤算があった。
「開始30秒でFBを失うという事態は予想していなかった。西村はバックフィールドのコネクトの重要なプレーヤー。彼女がいなくなったことでスクランブルの戦いになってしまったけれど、選手たちは気落ちせずに戦ってくれた。NZは決定力の高いチーム。失点にはいくつか悔やまれるところもあったけれど、今日の選手たちのパフォーマンスについてはスコアだけで判断しないでいただけたらいいなと思う」

効果的だった津久井萌のボックスキック
――キックがノータッチになってカウンターを浴びる場面が目立ったが、意図したノータッチだったのか、風の影響があったのか。
「狙いとしてはロングキックでタッチに出したかった。NZはカウンターアタックの能力が高いので、そのチャンスを与えないようにしたかったけれど、前半は風下で、キックの精度が狂わされてしまった。我々はラインアウトを強みにしていたので、タッチに出して、相手のラインアウトにプレッシャーをかけていきたかった。ただ、後半は風上になって、キッカーとも話をして、修正できたと思います」
長田いろはキャプテン

長田いろはキャプテン
「まず現地で、テレビで、応援いただきありがとうございました。本当にフィジカル的にタフなゲームでしたが、仲間たちが体を張ってくれて、強い気持ちで最後まで戦えました。仲間たちを誇りに思います。悔しい結果になったkれど、試合の入りの部分など、先週のアイルランド戦よりもよくなっているので、最後のスペインには勝ち切って終わりたい」
――NZの印象は。
「NZは私たちに対してフィジカルで戦ってくると予想して対策を立てていたけれど、そのフィジカルな部分にDFが寄せられて外が足りなくなったり、修正しきれないところでスコアされてしまった。そこは来週に向けて修正しなければいけないところだと思う」
――最後の時間帯は数的優位を得たが、なかなかスコアできなかった。
「最後の10分間は敵陣に入って、自分たちの強みのモールを使って得点を目指した。結果的に得点はできなかったけれど、そこまでハードワークできたことは自信になるし、誇りに思う。次の試合は私たちにとっても、次のサクラXVにとっても大事な試合になる。勝って次につなげたい」