17日、札幌・大和ハウスプレミストドームで行われる「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2025最終戦・札幌大会」入替戦での注目選手を紹介する。シーズンポイント9位以下の、横河武蔵野アルテミ・スターズ、アルカス熊谷、追手門学院VENUSの3チームに挑むのは日本経済大学アマテラス、ブレイブルーヴ、早稲田大学の3チームだ。シリーズポイント12位のチャレンジチームとチャレンジャー大会4位のアザレアセブンはエキシビションマッチとなる。
2025/08/16
文●大友信彦
日本経済大アマテラス(チャレンジャー大会1位)vs追手門学院VENUS(コアチーム11位)

サクラフィフティーンにも選出された垂門奈々(日経大)
日経大は昨年はコアチームとして太陽生命シリーズを戦い、ポイントで並んだアルテミ・スターズを得失点差で下回り降格となった。今回入替戦を戦う追手門とは昨年の4大会すべてで対戦し、北九州大会では日経大が28-26で勝利。そこからは熊谷大会で31-7、鈴鹿大会で28-5、花園大会で34-5と追手門が3連勝。追手門の3勝1敗だった。
日経大は今年5月のチャレンジャー大会で優勝し、入替戦シード1位を獲得した。しかし6月のカレッジセブンズでは準々決勝で追手門学院に19‐21で敗退。この入替戦ではその追手門と対戦することになった。
日経大は6月のカレッジセブンズを欠場した司令塔・原田紗羽がこの大会も欠場。あわせて突破役を担うラヤシ、リリーという2人の外国出身選手が欠場となった。FWの大黒柱となるPR町田美陽はサクラフィフティーンでワールドカップへ遠征中。大駒が揃って欠場する。
そんな陣容の日経大にあって注目は垂門奈々。4月のサクラフィフティーン北米遠征アメリカ戦で初キャップ&初トライを挙げた日本女子の新星ながら、ワールドカップを目指すサクラフィフティーンを辞退してこの入替戦にフォーカスしてきた。
「キャプテンが喜んでいるところを見たい。私が九州選抜に選ばれて初めて鹿児島から福岡に行ったとき、温かく迎えて仲良くしてくれたんです。そのキャプテンを喜ばせたい」
と、この試合にかける。

松田向日葵
追手門の注目選手はサクラセブンズの松田向日葵。太陽生命シリーズではなかなか上位チームの壁を破れなかった追手門だが、松田はどの試合でも必ず意地のブレイクでトライを返していた。花園大会では
「一度もベスト8に上がれなかったのは悔しい。外国人選手のいない学生チームでも、学生にしかない強み、エナジーを出せると思う。出さなきゃいけない」
と唇をかみながら
「日本にいても世界トップの外国人選手と戦えるのは楽しい」
と、コアチームとして戦った誇りものぞかせる。なかなか思うような順位はあげられなかったが、上位チームにも食い下がったポテンシャルを入替戦で発揮したい。
ブレイブルーヴ(チャレンジャー大会2位)vsアルカス熊谷(コアチーム10位)

武藤玲子
チャレンジャー大会2位のブレイブルーヴは、エース格の安尾琴乃がサクラフィフティーンのスペイン戦で故障離脱、安藤菜緒をワールドカップに送り出した。5月のチャレンジャートーナメントに「出場したブリトニー・タマニバルは夫セタとともにオフで帰国中。やや苦しい布陣での戦いになるが、楽しみなのはクラブ設立当初からエース格として活躍してきた武藤玲子が久々の復帰したことだ。
もうひとつ心強い材料は今年3月、兄貴分のブレイブルーパスが札幌遠征した際、前座としてブレイブルーヴが今回の会場となるダイワハウスプレミストドームでディアナとエキシビションマッチを行ったこと。今大会はワンデートーナメントで行われ、どのチームも会場慣れする機会がないまま本番を迎えるという酷な設定で、かつ太陽生命シリーズは初開催の会場だけに、1試合を経験しているのは貴重なアドバンテージだ。

鈴木柚来
対するアルカスは、6月のカレッジセブンズでは準優勝の好成績を残したが、太陽生命シリーズでは不振が続き、一度も8強入りできずに入替戦に回ってしまった。
それでも花園大会ではプール戦でフェニックスを破り、9位以下戦ではチャレンジと追手門を破って今季最高の9位フィニッシュと調子を上げてきた。
3大会で10トライをあげてきたエース鈴木柚來は、チーム最速を争う高速ランナーながら(自身は「廣瀬翠さんが一番で私はその次」と謙遜したが)FWに入ることでチームのオプションを増やしている。
「セットプレーでしっかりボールを獲得することでチームに貢献できるよう、まずはたくさん食べて体を大きくしています」
太陽生命3大会を重ねて経験値を高めたこと、その激戦を重ねる中でもサイズアップしていたのは頼もしい。コアチームの誇りをかけてブレイブルーヴに立ち向かう。
早稲田大(チャレンジャー大会3位)vs横河武蔵野アルテミ・スターズ(コアチーム9位)

尾久土栞
2024年4月に創部した早大は活動を始めて実質1年余りだが、チャレンジャートーナメントでは先輩格のRKUグレース、弘前サクラオーバルズを破り、準決勝の日本経済大には敗れたもののアザレアセブンとの3位決定戦に19-14で勝利。6月のカレッジセブンズではプール戦で立正大に大敗したがグレースとアルテミ・スターズには大勝。準々決勝ではチャレンジャートーナメントの雪辱に燃えるアザレアに22-14で勝利。前年の8位から4位へとランクアップを果たした。
創部わずか1年で目を見張る進歩をみせている原動力は1年生たちだ。昨年11月のU18女子セブンズで優勝した関東学院六浦からMVPを獲得した高橋みひろ&あいりのツインズが、京都成章からはグローバルユースセブンズ優勝の一員・尾久土栞が加入。ユースアカデミー経験者の岡本美優(3年)に集中していたアタックの起点が多彩になり、2年生の荒木喜ッ花ら大学からラグビーを始めた初心者がハードワークを反復する。創部1年で確固としたチームカルチャーを築きつつあるのは、赤黒ジャージーの重みかもしれない。

山本和花
挑戦を受けるアルテミ・スターズは太陽生命シリーズ3戦目の花園大会で今季初の8強入り、さらにチーム最高成績となる5位の成績を収めた。ゲームリーダーの西舞衣子が復帰し、新人の木川海に集中していたアタックの負担が分散化。攻撃チャンネルが増えたことで突破役の片岡詩、エース矢崎桜子の得点力が倍増した。15人制ではフロントローながら走力のある山本和花の運動量、旺盛なコミュニケーションもチームを活性化させている。
「(早稲田は)新しいチームですごく成長スピードも早くて、勢いのあるチームだと思うので。そこはしっかり気を引き締めて、コアチームだからといって、気を抜くのではなく圧倒するんだという気持ちで戦いたい」(山本和花)
早大の千北佳英主将はアルテミ・スターズアカデミーの出身で昨春まではアルテミ・スターズのシニアチームの中心選手だった。互いによく知り、リスペクトする相手との対決が入替戦を彩る。
アザレア・セブン(チャレンジャー大会4位)vsチャレンジ(※エキシビションマッチ)

星谷心咲

大久保芽衣
チャレンジチームは花園大会に引き続き神戸ファストジャイロ、弘前サクラオーバルズ、四国大などから選手を招集したほか、アルカスから大久保芽衣、佐藤花南の1年生2人が参加。大久保は宮城県利府高出身で、身長176cmという高さが魅力の21歳。エキシビションマッチという舞台で経験を積み、成長を果たしてほしい。佐藤花南は秋田工出身で、鬼多見友里愛と新居里江子、古関未來は弘前サクラオーバルズ在籍。対するアザレアには岩手県大槌町出身、釜石シーウェイブス育ちの平野恵里子がいる。東北育ちのラグビー娘たちの競演が楽しみだ。
![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |