プレシーズンは譲渡問題に揺れたグリーンロケッツ東葛が、譲渡問題の決着を祝う快勝でシーズンのスタートを飾った。
レッドハリケーンズを地元・柏の葉に迎えたグリーンロケッツは開始4分、最初のスクラムで得たPKからタッチキックを蹴り、そのラインアウトからゲームキャプテンのFL亀井亮依がキャリー。そこから右に展開し、WTB後藤輝也がゴール前まで前進。いったんタックルで倒されるが、起き上がって再びボールを持つとポスト右に先制トライ。新加入のSOホヘバがコンバージョンを決め、7点を先制する。

開始3分、東葛FL亀井主将が強烈にキャリー

WTB後藤輝也が先制トライ

新加入のSOホヘバがコンバージョン成功
7点を先行したグリーンロケッツは8分にもNo8ネルがタックルを次々と突き抜けてトライラインへ。ここはいったんトライが宣告されるもTMOで確認するとわずかに届いておらずトライキャンセルとなるが、15分に再びWTB後藤の前進から左WTB尾又寛汰が左隅へ。レッドハリケーンズも28分にスクラムで得たPKから相手ゴール前に攻め込みFLオーサリバンがトライを返すが、31分にグリーンロケッツはWTB後藤がタッチライン際でタックルを受け一回転しながらギリギリでタッチをすり抜けトライ。17-7とリードして折り返す。

7分、No8ネルが突進するがトライは認められず

15分、WTB尾又がトライ

スタンドには名物・選手応援横断幕が多数張り出された

28分、大阪のオーサリバンがトライ

30分、東葛WTB後藤が転がりながら足を宙に浮かせてタッチラインを避ける神業トライ
後半もグリーンロケッツは21分にWTB尾又のチップキックをレッドハリケーンズが取れずバウンドしたところに走り込んで捕ったCTBオルビン・レジャーがトライ。レッドハリケーンズも71分、FB山口泰輝の突破から途中出場CTB鶴田馨がトライを返すが、この日のグリーンロケッツは取られたらすぐに取り返す回復力を見せ、74分にCTB小幡将己のキックを追ったWTB後藤が3本目のトライ。勝負を決めると同時にトライ数5-2でBPも獲得した。

ハイボールを競りあう大阪・土橋と東葛・後藤

モールからボールを出す大阪HO島田主将

素早い動きでリードした東葛SH藤井

60分、東葛CTBレジャーがトライ

苦戦の中でよくボールをさばいた大阪SH山内

73分、後藤輝也が3本目のトライ

大阪に今季加入したリーグワン最長身210cmのJPデュプレアは62分にピッチへ
今年8月、グリーンロケッツの母体企業NECは、2025-26シーズンを最後にグリーンロケッツの譲渡を目指すと発表。リーグ規約に基づき、開幕までに譲渡先が決まらなければリーグワンから撤退、日本選手権優勝3回の名門が消滅してしまうという危機が明らかになり、選手たちは不安の中でプレシーズンを送っていた。そしてこの試合の2日前、グリーンロケッツの譲渡先がJR東日本に決まったと発表。

試合後のハドルにはJR東日本の担当者も加わってコメントがあった
この日の試合前には、試合場近くの選手ミーティング会場にNECの森田隆之社長とJR東日本の喜勢陽一社長が訪れ「選手たちが安心して開幕戦を迎えられるよう、どうしても開幕までに皆さんに報告したいと思い、大急ぎで調整しました」と秘話を明かして激励。両社長とも多忙のため試合観戦はかなわなかったが、スタジアムへも移動し、バスで会場入りした選手たちをハイタッチで迎えた。

応援に駆け付けたJR東日本のスタッフ
「感激しました。言葉からも伝わってきたし、忙しい社長が2人そろってここまで足を運んでくれて、目の前にいることが本当にありがたいと思いました」と、3トライでPOMに輝いた後藤。

POMの後藤輝也
ゲーム主将を務めた亀井は、試合後のセレモニーでも「開幕前に譲渡成立の報告を受けて、選手にとっても最高の形で開幕を迎えられたこと、そのために尽力されたNECとJR東日本の方々に感謝します。僕たちの目標は変わりません。D2で優勝して、入替戦に勝ってD1に行きます」とあいさつ。会見では「(譲渡成立は)めちゃくちゃうれしい。ニュースが出た日は練習後、LINEメッセージの着信数がすごかった。チームとしても動揺した時期があって、苦しい時間、モヤモヤした時間があったけど、リリースを受けて、とにかく明るくなりました。昨日のキャプテンズランも、より明るくなったし、よりコネクションを強めて試合に臨めたと思う」と、ポジティブな心境で試合に臨めたことを明かした。

亀井主将の試合後のあいさつ
その気持ちはファンやOBも同じだったのだろう。試合前の会場周辺にはキッチンカーや協力企業・団体のブースが多数出店、歴代のOBたちがラグビー教室に体を動かしていたが、誰の声も表情もみな明るかった。スタンドには5485人のファンが集結し、グリーンロケッツの応援に声を枯らした。スタンドとピッチが一体化になって戦った80分間だった。

ゴール裏の車いすシートで応援したファンひとりひとりにあいさつ
一方、敗れたレッドハリケーンズの島田久満主将は「開幕に向けてよい準備をしてきたけれど、相手の勢いに受けてしまった。フォーカスしてきた接点の攻防で負けてしまった」と唇をかみながら「きょうは会場にたくさんのお客さんがいらっしゃって、グリーンロケッツはファンが多いチームだな、愛されているチームだなと思ったし、リスペクトを持って試合に臨みました」と相手を称賛。グリーンロケッツの譲渡成立については「僕たちも3年前、チームが再編されてどうなるかわからない経験をしたし、(東葛には)選手にもスタッフにも友達がたくさんいるし、ラグビーチームがなくならなかったのは僕らとしても嬉しかった」と、ラグビーマン仲間の窮地脱出を笑顔で祝福した。

大阪の松川HCと島田主将
次節はグリーンロケッツは20日(土)に花園ラグビー場で花園ライナーズと、レッドハリケーンズは21日(日)に大阪・ヤンマースタジアムで豊田自動織機シャトルズ愛知と、それぞれ対戦する。



大友信彦