5月3日、NTTジャパンラグビーリーグワンは第17節を迎えた。秩父宮ラグビー場では、クボタスピアーズ船橋・東京ベイと埼玉パナソニックワイルドナイツの首位攻防戦が行われた。
すでにプレーオフ進出を決めている両チームだが、その前哨戦ともなるこの試合は、戦前の予想どおり80分互角の戦いとなり、結果、29‐29で同点でノーサイドを迎えた。
2025/05/03
文●編集部
勝利すれば、1位通過の可能性もあったスピアーズは、序盤先制を許すも、前半16分、HOマルコム・マークスとPRオペティ・ヘルの縦の突進で前進すると、CTBリカス・プレトリアスがアウトサイドに流れてポイントをつくると、敵陣15m付近でFLタイラー・ポールがブレイク。そのままゴール中央までボールを運びトライ。バーナード・フォーリーのゴールも決まり、7‐7と同点。

タイラー・ポールのタックル

デーヴィッド・ブルブリング

オペティ・ヘル、マルコム・マークスがスターターに

マルコム・マークス

立川理道がコンテストキック

オペティ・ヘルにリアム・ミッチェル

前半16分タイラー・ポールがトライ
再びワイルドナイツ山沢拓也にトライを許し追いかけるスピアーズは、32分、マルコム・マークスが敵陣22mで起点を作るとSH藤原忍がBKに展開。プレトリアス、フォーリー、さらにフォーリーの背後から加速して入ってきたFB押川敦治がブレイク。押川がディフェンダーを引き付けて大外のWTB根塚洸雅へパス。根塚が左隅にトライ。フォーリーが角度のあるところからコンバージョンを決めて14‐14の同点とした。

スピアーズはキックを多用した

タックルを受けながらもボールをつなぐ立川理道

押川敦治が突破

根塚洸雅がインゴールへ

前半32分ルード・デヤハーのタックルを受けながらもボールをグランディングするWTB根塚洸雅

角度のある位置からのコンバージョンを決めるバーナード・フォーリー
それでも前半終了間際、自陣ゴール前でペナルティなくディフェンスをし続けるも、ワイルドナイツもフェイズを重ね19フェイズ目、WTB長田智希のトライを許し、14‐19とリードされて前半を終えた。
後半7分、スピアーズはLOルアン・ボタ、11分にはWTB山田響を投入。12分にPGを決められ8点差とされるも、15分にフォーリーのPGで5点差に戻し後半の終盤20分へ。フロントロー3人を同時に交替。ワイルドナイツ側もリザーブ陣を投入しフレッシュレッグズの戦いとなる。
後半24分、SH藤原忍がワイルドナイツSH小山大輝のキックをチャージ。そのボールがPR海士広大に入りチャンスを迎える。クイックでボールを出すとBKへ展開。一気に敵陣ゴール前までスピアーズがボールを運ぶとワイルドナイツがペナルティ。タッチに蹴り出し、スピアーズがゴール前ラインアウト。HO江良颯がボールを入れてモールを組む。ここはワイルドナイツも凌いで前進を許さない。藤原はBKへ展開。

後半22分まで出場したHOマルコム・マークス

80分フル出場のLOデーヴィッド・ブルブリング

CTBリカス・プレトリアス

果敢に仕掛けたWTB根塚洸雅
立川理道、リカスと長いパスで一気に展開。押川敦治がボールを持つと手前には2人のディフェンダー。味方のサポートが追いついていない状況で押川は逆サイドにステップを切って2人のディフェンダーを振り切り、ボールをキープ。味方のサポートを待つ。
ラックが形成されると、藤原がパスダミーから自らボールをキャリーして相手を揺さぶる。ゴール前にポイントを作り、さらにHO江良颯がピックゴーでインゴールへ。オリヴィエ、ラピースの援護を受けてボールをグラウディング。22‐22の同点にした。さらにフォーリーのコンバージョンも決まり、この試合初めてスピアーズがリードした。

後半27分HO江良颯のトライ
当然このままでは終わらないワイルドナイツは、75分にオッキー・バーナードのトライで再びスピアーズは5点を追いかける展開に。

観衆は15000人を超えた
後半38分、自陣深くで相手からボールを奪ったスピアーズ。ラストプレーに全てをかける。自陣15m付近までボールを運ぶと、フォーリーが相手に絡まれながらもオフロードパスで立川へつなぐ。さらに立川からリカスへ。ワイルドナイツのディフェンスラインが整っていない状況で、スピアーズは大外に山田響が残っていて、2 vs 1の状況。
リカスから山田にボールが繋がれ、チャンジオブペースで山沢拓也を弾き飛ばすと、ハンドオフで小山大輝も突き放し加速。そのままインゴールへ。劇的な同点トライ。コンバージョンが決まればスピアーズが逆転勝利だったが、フォーリーのキックはわずかに外れノーサイド。

後半39分山田響-vs-山沢拓也

小山をハンドオフして交わす山田

長田の追走も振り切り山田が同点トライ
スピアーズは勝ち点64として3位。最終節はトヨタヴェルブリッツとの対戦。勝ち点69まで伸ばすことができるが、ブレイブルーパス、ワイルドナイツ、両チームが勝利すれば、順位変わらず3位でのプレーオフ進出となる。

激闘は29‐29の同点で終えた

互いの健闘を労う両チームの選手たち



スタンドを周るワイルドナイツの選手たち

スタンドのファンに挨拶するスピアーズの選手たち
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ フラン・ルディケHC
見ていて激しく、どっちが勝ってもおかしくないバトルだったし、この試合のために、お互いが一生懸命やってきた。どっちのチームもがっかりしたり、残念な気持ちではないし、どっちが勝ってもおかしくなかった。最後のフィニッシュとしては、チームの力を見せることができたし、ギブアップせず今後につながる調味料的なところは良い要素がいっぱいあったので、勝つチャンスを見せることができたと思います。
シーズン終盤は暑さは大きいが、プレッシャーの中、どう対応できるのかも大きい。対応力、前半のキックのところの学びを活かして、後半はプレッシャーを多くかけることができたと思います。
――同点トライを挙げたWTB山田響の評価は
信頼できる選手で、能力もスキルある選手で、引き分けに持ち込んでくれた。彼は開幕戦、サントリー戦に出ていて、そのあとケガをしてしまった。3週間前に復帰した。S&Cコーチが仕上げてくれたところもあるし、ノンメンバーはケガ人が出たときにメンバーにステップアップしようとしていたし、彼が試合に出てチャレンジしてくれたことは見ていて嬉しかった。

フラン・ルディケHCと江良颯
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ HO江良颯
この試合、チーム一丸となって、スナイパーズ(試合メンバー)、スポッターズ(メンバー外)のどちらも良い準備ができた。ストーミーからあったが、過去と未来を見ずに今を見続けろ、ということで、試合に臨んだ。過去と未来というか先のことを考えず、一つ一つのプレーをした結果、こういう結果になった。この結果に満足していないですし、この引き分けという結果はチャレンジしたことはセレブレイトしないといけないが、またこれからトヨタ、プレーオフに対して、チーム一丸となって、一つ一つ、本当に6月1日の優勝に向けて頑張っていきたい。
――この試合のテーマは
スタンダードを求めて、チームとしてやってきた。スタンダードは前半の入りや、レフリーさんに対して見せ続ける、プレーに対しても一つ一つやっていくとやってきた。難しくなってもフォーカスするポイントがあったので、最後、フィニッシュストロングで追いつくことができた。
――後半、チームの出来が良かったが
常にインパクトプレイヤーとして、SHブリン・ホールが前半から話して自分たちがやることをまとめて明確になっていて整理できていた。出るからにはチームにインパクト与える選手になろうと考えることができたので、あのような結果になった。
――相手のディフェンスについて
ディフェンスのチームですし、青い壁というか、つながりが強いチームという印象で、その中でも自分たちの強みであるフィジカルを全面に出しつつ、BKがスペースにボール運ぶのが自分たちのラグビーなので、まずフィジカルで崩していこうというイメージでやっていた。細かい技術をスラッシーさんに教えてもらっているが、できたりできなかったりだったので、スタンダードを上げていきたい。
――プレーオフに向けて
僕たちのスタイルは変わらないし、強みを全面に出して、コーチに教えてもらって磨き上げるところは磨き上げていきたい。あとは自分たちを信じて自信を持ってプレーしたい。
――ノンメンバーの力に関して
スナイパーズ、スポッターズと分けているが、スポッターズが常に競争心を持ってやってくれている。誰が出てもよいように準備しているので、層が厚いチームになっているのかなと思います。一つ一つの練習から一生懸命、積み上げてきてやっている。だからこそ(山田)響もケガの中、練習参加してコミュニケーションしていたので、復帰してすぐにあのようなパフォーマンスを出せたと思う。